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帰山栄治作品解説集

ヴィオロンチェロとマンドリンオーケストラの為の三章

編成 演奏時間
Solo Violoncello Mn1 Mn2 Ma alto Ma tenore Mc Gt1 Gt2 Cb 35分
演奏日時 備考 演奏団体
1980.6.28 初演 レム帰山栄治作品発表会その2 - 「ヴィオロンチェロとマンドリンオーケストラの為の二章」を改作

この作品はもともと「マンドリン合奏の為の三章」として作曲され1973年6月24日に名古屋マンドリン合奏団によって初演された。その後、「ヴィオロンチェロとマンドリンオーケストラの為の二章」として改作され、1976年10月24日に杉浦薫氏のチェロ独奏と名古屋マンドリン合奏団によって初演された。
そして、1980年6月28日に開催された「帰山栄治作品発表会その2」に望んでさらに改作されたものがこの「ヴィオロンチェロとマンドリンオーケストラの為の三章」であり、杉浦薫氏のチェロ独奏とレム・マンドリンオーケストラによって発表された。なお初演時の演奏時間は約35分であった。
この作品は、半音の動きの多さに加え、全音音階や多調が用いられ、調性が曖昧になっている。

第1章

グリッサンドを多用したオーケストラと加速的に変化する音価と3連符を多用したチェロとが対話するような形の序奏で曲は始まる(テンポは4分音符=60)。その3連符はオーケストラに波及し動くがそのなかでチェロは3連符を捨てて2連符で歌い出す。
暫くして、テンポを速め(4分音符=100)、主部に入る。ここではまずいわゆる「ブルックナー・リズム(3連符と2連符が交互にあわられるリズム)」によるマンドリン系楽器のリズムと恒常的に3連符を奏するギターの中で、ブルックナー・リズムを内包したチェロ独奏が奏される。ここではリズムの複合的な関係が縦のみならず横にも与えられている。そして序奏であらわれた2連符によるチェロソロによる旋律が3連符のリズムの中でカノン的に歌われる。
この後、チェロ独奏が活躍する場面と、ブルックナー・リズムを用いた場面と、2連符の幅広いメロディーが交互に現れ、チェロソロのピッチカートに続いてギター、コントラバスがピッチカートでH音を静かに3回ならしてこの章は終わる。

第2章、および、第3章

楽譜では、第2章の始まりの所に章番号が「II-III」と記され、第2章と第3章が一緒にされており、それぞれを分ける箇所が楽譜上明記されていない。帰山氏によると、第2章が緩徐楽章なのでテンポが速くなったところから第3章のはず(?)とのことで、「II-III」の最初の速度記号である Andante lentoが、練習番号43から4分音符=132となっており、おそらくここからが第3章であろう。

この第2-3章では多調が用いられている。私はこの曲を聞いたときは、おそらくフランスの作曲家ダリウス・ミョーをその範としているのではないかと思っていたが、帰山氏の話によると同じくフランスの作曲家であるオリヴィエ・メシアンだそうである。この他にも「三楽章第3 番」などでも多調は用いており、この頃の帰山氏の作風を特徴付ける作曲技法の一つと言えるであろう。
第2-3章は、マンドリンのロングトーンのなかでまずギターが動きだし、2ndとマンドラ・アルトが歌い出すと、1st、チェロソロ、マンドラとチェロと掛け合い、1stとチェロソロのカノンを経てマンドラとチェロソロがユニゾンで歌う。それを他のパートが彩るのだが、それは第1章で見られたブルックナー・リズムが表れたり、ポリリズムだったりする。もちろん2度ずれた調が現れるといった多調もみられる。実に様々手法が用いられている。
その後、テンポを速め(4分音符=132)やはり複合的なリズムを用いながら、チェロソロとオーケストラが対等な立場となったり、ソロにオーケストラが従えられるようになったりするのを経て、ソロとオーケストラが一体となって盛り上がる。そして8分音符で刻まれた静かなマンドリンの高いD音を経てテンポを落とし、音色の濃淡をうつろわせながらテンポを戻したのち、次第にオーケストラの力が弱まり、ギターに導かれてチェロソロのカデンツァになる。帰山氏によるとこのカデンツァを初演時のソリストの杉浦氏は、初見で見事に弾いたそうである。そして、オーケストラの静かなtuttiの中、チェロの高いD音で曲は閉じる。

この作品では、グリッサンドやブルックナー・リズム、ポリリズムが作品全体をリズムの面で支配しており、またメロディー、和声へ目を向けてみると、多調や全音音階の使用により、調性をあいまいなものにしている。
世の中のマンドリン作品が保守的なものが多い中、この作品は、技法に限らず様々な面から見て数少ない同時代性を有した作品ではないかと思う。

(西海)


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